賞が実力に追いついた? 祝・東野圭吾直木賞受賞! [本]
1月17日、第134回直木賞、芥川賞が決まった。 今回は直木賞を”本格的な推理小説”で受賞した東野圭吾について、新聞・雑誌記事横断検索で調べてみた。 ●ベストセラー作家・東野圭吾 東野圭吾は1958年生まれ、大阪出身。大学卒業後、エンジニアとして働く傍ら執筆活動を開始。1985年『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞し、本格的な作家活動を開始(乱歩賞は社団法人日本推理作家協会が主催)。 現在、約60冊はある著作は、ミステリーだけではなく、エッセイや絵本まで。 ちなみに、2006年1月現在、新聞・雑誌記事横断検索でキーワードを”東野圭吾”としてヒットする記事約1300件の中で最も古いものは、1985年の乱歩賞受賞を伝える記事。最も収録開始が早い(古い)「朝日新聞記事情報」の収録開始年の記事であった。 さて、読書家には有名だった東野圭吾の名前が一般的に知られるようになったのは1999年。前年9月に出版された『秘密』が映画化されたことによるものではないだろうか。広末涼子が”40代の母親の心をもった10代の娘”を演じたことでも話題になったといえば、思い出す方も多いのではないだろうか。 ファンにとっては賛否両論、穏やかではない部分もあるかとは思うが、東野圭吾作品は映像化したくならせるものがあるのかも知れない。 ●ありがたみがなくなった?直木賞 直木賞は正式名称「直木三十五賞」、大正・昭和の作家直木三十五の業績を偲び、その死の翌1935年に菊池寛によって創設された賞である(現在の主催は財団法人日本文学振興会)。 なお、同日に選考、決定される芥川賞(芥川龍之介賞)は、無名・新人作家による純文学短編作品に送られる賞で、同じく1935年に、菊池寛によって創設されている。 純文学と大衆文学の差がなくなってきつつあるといわれる近年では、短編が芥川賞、長編が直木賞だと言われることもあるようだが、どちらも文学界の話題作りという面を持っている日本で最も有名な文学賞であることは間違いないだろう。 ただ、現在、全国で500余りの文学・文芸賞があるということ、また、東野圭吾が「ゲーム」と称し、絲山秋子が「今回とれなければ、今後候補になることをお断りしようと思った。無駄なことで時間が失われるから」とまで語ったということからも、書き手にとって賞自体のありがたみが薄くなっているのではないかという指摘もあるようだ。 ●名(賞)が実(実力)に追いついた? さて、江戸川乱歩賞受賞作でデビューし、ミステリーを書いてきた東野圭吾は、近年は事件や謎を契機として揺れ動く現代を描く重厚な物語へと作風を広げているという。 過去、直木賞候補作としてノミネートされた東野圭吾の作品は以下の通り(カッコ内はその回の受賞作)。 第120回 『秘密』 (宮部みゆき『理由』) あらすじ紹介は置くが、何度も本命と目されながらも「重いテーマの割には人間の描写が軽すぎる」「技巧が巧みすぎ読者の心を打つかという点が評価が分かれる」等の理由で受賞を逃してきた(選考理由が減点方式のように見える・選考委員の主観的な言葉でしか選考過程が伝わってこないことも、直木賞批判の元になっているのではないかと筆者は思うが……)。 今回の受賞作となった『容疑者Xの献身』についても選考過程を伝える記事によると、上と同じような意見もあったという。ただ、「トリック主体としての小説としての完成度が高い」「人間がかかれていないという点で選考委員の激しい議論があったが、それを求めると、トリックが成り立たない」という理由から晴れて受賞となったという。 本格的な推理小説が直木賞を受賞するのは極めて珍しいことであるそうだ。 映画『変身』の公開、『白夜行』のドラマ化、直木賞受賞と、今、書店には東野圭吾の多くの本が山積みにされている。今までなんとなく敬遠していた方やちょっとでも興味を覚えた方は、是非一度手に取ってみてはいかがだろうか。 (text by ゆ) |
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