日本のハンバーガー発祥の地、佐世保の「佐世保バーガー」 [食べる]
日本のハンバーガー発祥の地、それが長崎県佐世保市だ。佐世保市では1950年頃に駐留米軍基地から地元の日本人にハンバーガーのレシピが伝わった。そのハンバーガーが、現在「佐世保バーガー」と呼ばれ、東京都内や首都圏各地でブームを呼びつつある。 今回はその佐世保バーガーの発祥と人気について「新聞・雑誌記事横断検索」を用いて調べてみた。 ●そもそも佐世保バーガーとは何なのか?「新聞・雑誌記事横断検索」にログインし、キーワードを「佐世保バーガー」として検索すると、約50件の記事がヒット。それらの記事見出しから主だった記事を選ぶと、佐世保バーガーの全容が見えてくる。 記事によると佐世保バーガーの発祥は1950年頃という。東京・銀座にマクドナルド1号店が登場したのが1971年であるから、佐世保バーガーはこれの20年以上も前に登場した事となる。 朝鮮戦争が開戦した当時、佐世保基地にはアメリカ海軍が駐留し市内は米兵で溢れていた。そのアメリカ海兵からのリクエストを聞いて作られたのが佐世保バーガーの始まりと言われている。 本場のアメリカ人向けに作られ、外国人バー街で売られた佐世保バーガーだが、次第に日本人に合わせた味に改良が重ねられた。市内に約30店あるという店舗が現在のラーメンブームのように味を競い合い、パンやパテで店ごとの個性を主張。その努力の結果、市民の味「佐世保バーガー」として定着したのだ。 佐世保市には、現在でも米軍基地ゲートそばにある老舗の「ヒカリ」や「ブルースカイ」さらにベーコンエッグバーガーを開発した「ビッグマン」など名店が存在し、人気店の中には週末ともなると1時間待ちになる店や観光バスが止まる店までもあるという。 ハンバーガーには、ファーストフードのイメージが付きまとうが、佐世保バーガーはそれらチェーン店の商品とは別物、この歴史と練り込みを見ると佐世保の郷土料理とも言えよう。 当然、地元での佐世保バーガー人気は絶大。04年に「ビッグマン」の近所に某ハンバーガーチェーン店がオープンしたが、1年もたずに閉店した例もある程だ。 また「一杯飲んだ後はハンバーガー」という発想まであり、関東でのラーメンに近いレベルで定着しているようだ。 ところが地元の人々には、ハンバーガーを町おこしに生かす発想がなかった。ハンバーガーが浸透していたがゆえに、余りに身近すぎた為に、逆に誰も注目しなかったのだ。 青年会議所のメンバーの一人も「よそでもみんなこんな感じだと思っていた」と言い、市当局でも「ハンバーガーを食べに観光客が来るはずがない」という思い込みがあったようだ。 ●大人気!ハンバーガーマップ佐世保バーガーが全国的に知名度をあげたのはごく最近で、01年に佐世保市の働きかけで旅行会社でハンバーガークーポン付き旅行券を発売した事がきっかけだ。 この旅行券の売れ行きはさっぱりだったが、付録としてつけた「ハンバーガーマップ」が大ヒット。マップを欲しがる人が殺到し、当初の5000部があっという間にはけ、翌年は年間10万部も配布し、ネットや口コミでファンの輪が広がるきっかけとなった。 ●佐世保バーガーを観光資源へ!さらに03年には、東京・中野に初進出した佐世保バーガーの店舗「ZATS BURGER CAFE」が成功。これらを見て、佐世保でもようやく佐世保バーガーを観光資産とできるのでは?と注目されだしたのだ。 こうした佐世保バーガーに追い風が吹いた。 米軍基地を会場とする恒例行事の「西海岸アメリカンフェスティバル」が米同時多発テロの影響などで2年連続中止となったのだ。その代案として行う祭りの企画に関係者は迫られ、04年8月に、JR佐世保駅前で「佐世保バーガーフェスティバル」が開催されのだ。 当初、集客を危ぶむ声もあったこのイベントだが、蓋を開けてみると5万人の人出を記録する大成功の祭りとなった。 祭りには13の佐世保バーガー名店が出店したが、店には最高2時間半待ちの長蛇の列ができ、材料切れで販売停止をした店まで出る異常な熱気に包まれたという。 ちなみに佐世保市の人口は約24万人。これを考えるとこのイベントに集まった5万人という数字の凄さがわかる。 ●佐世保バーガー首都圏展開へ東京・中野への出店を行い首都圏への進出を果たした佐世保バーガーだが、佐世保バーガーの観光に生かすために様々なPR手段を取ってきた。その一つが佐世保バーガーのイメージキャラクター作成だ。 そこで登場したキャラクターはなんと、アンパンマンの著者やなせたかしさんによるデザイン。佐世保をイメージし、ハンバーガーに水兵とコックを組み合わせた清潔感あるデザインだ。名称は公募により「バーガーバー」と決定、携帯ストラップなどのグッズも制作され人気を呼んでいる。 さらに、やなせさんは「佐世保バーガーソング」を作曲。こちらは近くCD化もされるという。 大掛かりな出店展開も始まった。05年2月に「ららぽーと」にオープンした「東京パン屋ストリート」へ佐世保バーガーの名店「ビッグマン」が出店したのだ。 「東京パン屋ストリート」はナムコでも初となるパンが中心となったフードテーマパーク。ここでは年間150万人の集客が見込まれており、東京展開のきっかけとしては、またとないチャンス。力の入れようを感じる。 ただ一つ残念なのは、やなせさんデザインによるキャラクター「バーガーバー」が、東京進出にあたり「バーガーボーイ」という名前に変わってしまったのだ。 理由は「バーガーバー」という呼び名が東京では「バーガー婆」に聞こえるというものだ。 「バーガーバー」という名称は、地元の人が店でハンバーガーを注文するときに「ハンバーガー ば、ひとつ」と言う、方言の語呂にあわせてつけたという。 この場合の「ば」が方言で、てにをはの「を」にあたる。例えば「ハンバーガーを、ひとつ下さい」と言うときに「ハンバーガーば、ひとつくれんね。」というのだ。 佐世保市の町おこしを荷い、地元と切り離せない佐世保バーガーのキャラクターだけに、方言という地元を代表する表現を変えたことが残念に思える。 (text by や) |
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